症例報告その⑤ Mohsペースト
Mohsペーストの記事を書いてから少しずつMohsペーストを実施する機会が増えてまいりました。
Mohsペーストとは?
ここでは簡単にご説明しますが、「しこりの表面に塗ることで出血やにおいを抑える」ためのおくすりです。詳しくは上の記事をご覧ください。
いろいろなお薬を混ぜて作った軟膏(Mohsペースト)を院内でしこりに塗ります。
しこりの大きさによりますが20分ほど漬けておきます。
ペーストを洗浄して帰宅となります。
実際に使用したワンちゃん(写真を添えてご説明いたします)
今回のワンちゃんはミニチュアダックスフントさんで右肩付近にしこりがあったとのことで来院されました。(他の病院さんで脂肪腫と診断され様子を見ていたところだんだん大きくなってしまったそうです)
気づけば10センチほどになりしこりが割れてしまった結果、分泌液や出血・においを発するようになってしまいました。
しこりができた場所が肩のため皮膚に余裕がないこと、またしこり自体が大きくなってしまったことから手術は困難であり、飼い主様も希望されなかったためMohsペーストによる処置をしました。
苦手な方はクリックしないようお願いいたします。
1日目: しこりが破れてしまい、出血が見られます。まずは20分浸漬時間を設けてみることにしました。

8日目: わずかな変化に見えるかもしれませんが、しこりが全体的に小さくなりました。飼い主様からは分泌液が減ってきたとのお話がありました。

15日目: しこりの表面が壊死して脱落。

29日目: 乾燥・縮小が進み、生活の質が改善。

43日目: さらなる縮小が見られたためシャンプーを実施。

最終的にはかなり小さくなりました。飼い主様も大満足です!!ワンちゃんも痛みに耐えて最後までよく頑張ってくれました!!
そこで1つの疑問が・・・
これなら手術はいらないのでは?
残念ながら、Mohsペーストはしこりの根源である腫瘍細胞を完全に死滅するわけではないんです。
そのため現在もこちらのわんちゃんは新しいしこりができてしまい闘病中です。それでも分泌液やニオイ、出血は見られていないため冒頭にあった「しこりの表面に塗ることで出血やにおいを抑える」という目的は達成することができました。
Q&Aのページはこちら。
Mohsペーストはすべてのしこりに適応できるわけではありません。体質や状態を診た上でご提案いたします。気になる症状がある方はお気軽にご相談ください。
※本記事の写真は飼い主様のご了承を得て掲載しています。


