犬の皮膚に赤い点や内出血を見つけたら|免疫介在性血小板減少症
元気や食欲はあるものの、皮膚に原因不明の内出血が見つかったワンちゃん。血液検査を行うと、出血を止めるために必要な「血小板」が著しく減少していました。
この記事では、犬の内出血を見つけたときの受診の目安と、実際に免疫介在性血小板減少症と診断したワンちゃんの治療経過をご紹介します。
こんな症状で迷っていませんか?
- ぶつけた覚えがないのに内出血がある
- お腹や内股、歯ぐきに赤い点々がある
- 病院へ連れて行くほどの症状なのか分からない
皮膚の赤い点々は、湿疹や虫刺されのように見えることもあります。血小板の減少による「点状出血」は、皮膚から盛り上がらない赤色から赤紫色の小さな点として見えることがあります。特に、お腹や内股などの毛が薄い場所や歯ぐきは変化を見つけやすい場所です。
元気でも受診した方がよい?
結論:原因の分からない内出血や赤い点々を見つけたら、早めにご相談ください
元気や食欲が保たれていても、血小板が減少する病気が隠れていることがあります。ぶつけた覚えのない内出血がある、複数の場所に赤い点がある、短時間で増えている場合は、元気であってもできるだけ早く動物病院へご相談ください。
より速やかな受診が必要な症状
- 鼻血や歯ぐきからの出血が止まらない
- 尿が赤い、便に血が混じる、黒い便が出た
- 内出血が短時間で広がる、または急に増えた
- 急にぐったりした、立てない、呼吸が速い
- 歯ぐきが白っぽい
診療時間外にこれらの症状が見られた場合は、夜間救急を含め、受診可能な動物病院へ連絡してください。
なぜ内出血が起こるの?
血小板は血液に含まれる成分の一つで、血管が傷ついたときに集まり、出血を止める働きをしています。
免疫の異常、重い感染症、腫瘍、薬剤、骨髄の病気などによって血小板が大きく減少すると、小さな出血を十分に止められなくなります。その結果、皮膚の赤い点や内出血として現れることがあります。
その中でも「免疫介在性血小板減少症」は、本来は体を守る免疫が誤って自分の血小板を攻撃し、血小板が減少してしまう病気です。
見た目以上に注意が必要な理由
血小板が著しく減少すると、皮膚だけでなく、消化管や尿路など体の中で出血することがあります。
- 消化管からの出血による血便や黒い便
- 尿路からの出血による血尿
- 出血が続くことによる貧血
- 鼻や歯ぐきからの出血
皮膚に見えている出血がわずかでも、体内で出血している可能性があるため注意が必要です。
※内出血がある犬のすべてが免疫介在性血小板減少症とは限りません。診断には診察と血液検査などが必要です。
実際の症例と治療経過
2歳のポメラニアンちゃんが、皮膚の内出血を主訴に来院しました。来院時には食欲は全く問題なく院内では元気に吠えていました。
初診日:血液検査で血小板の著しい減少を確認
血液検査では、血小板数が著しく低下しておりました。検査機器の数値だけでなく、血液を顕微鏡で確認する血液塗抹検査を行い、実際に血小板が著しく少ないことを確認しました。
血小板が減少した原因を調べる検査
免疫の異常以外による血小板減少の可能性を調べるため、問診や身体検査に加え、血液検査、レントゲン検査、腹部超音波検査を行いました。
これらの検査では、今回の血小板減少を説明する明らかな異常は認められませんでした。検査結果と臨床経過を総合し、免疫介在性血小板減少症を疑い、治療を開始しました。
治療開始
過剰に働いている免疫を抑えるため、ステロイド薬による治療を開始しました。刻一刻と変化が見られる病気のため、翌日にも来院していただきました。
治療2日目:内出血にわずかな改善、血小板を確認
治療開始から2日目には、皮膚の内出血にわずかな改善が見られました。血液塗抹検査では、初診時には確認できなかった血小板が確認されました。
🔴で囲っているのが血小板です。
その後も治療を継続し、1週間後に再度診察を行いました。
治療8日目:皮下出血が改善し、多くの血小板を確認
治療8日目には、皮下出血の改善が認められました。血液塗抹検査でも多くの血小板が確認され、治療への反応が認められました。
🔴で囲っているのが血小板です。
改善したあとも経過観察が必要です
免疫介在性血小板減少症は、治療によって血小板数や内出血が改善したあとも再発することがあり、なんと約30%程度とも言われております。そのため、自己判断で薬を中止せず、定期的な血液検査を受けながら慎重に薬を調整していく必要があります。
ご自宅で確認してほしいこと
内出血を見つけたときや治療中は、次の項目を毎日確認し、変化を記録してください。
- 内出血が拡大していないか
- 内出血が新しくできていないか
- 血尿がないか
- 血便や黒い便が出ていないか
- 歯ぐきの色が薄くなっていないか
内出血は写真に残しましょう
同じ明るさ、同じ距離、同じ角度で毎日撮影すると、内出血が広がっているのか、改善しているのかを比較しやすくなります。撮影日時が分かる状態で記録しておくと、動物病院へ相談する際にも重要な情報になります。
まとめ
- 原因の分からない内出血や赤い点々は、血小板減少のサインである可能性があります
- 元気や食欲があっても、できるだけ早く動物病院へ相談してください
- 黒い便、血尿、止まらない出血、急な元気低下などがあれば、より速やかな受診が必要です
判断に迷う内出血を見つけたときは、写真を撮ったうえでアリス動物病院へご相談ください。
※この記事は一般的な情報と当院で診療した一症例をご紹介するもので、個々の犬の診断を行うものではありません。症状や緊急性は犬によって異なるため、心配な変化がある場合は動物病院へご相談ください。


