日々の診察の中でこんな困ったことに出くわします。
皮膚にしこりができ、腫瘍が疑わしいのだけれどウチの子は手術がもうできない・・・
そうなると当然様子を観察していくことになります。
ただ、様子を見ていくとしこりが大きくなり、破裂して出血を繰り返したりニオイがきつくなってしまうことがあります。
今回は実際の写真とともに
手術をせずにしこりを上手く管理することができたワンちゃん
についてのお話をさせていただきます。
これより実際のお写真が出てきます。
加工はしておりますがそれでも苦手な方がいらっしゃるかと思います。
ご注意ください。
当院の患者さんで以前より耳の下のしこりが少しずつ大きくなっている子がいました。年齢は19歳6か月。
ある日からどんどん大きくなってしまいやがて出血や液体(滲出液)が見られるようになりました。
止血剤の塗布などをしましたがそれでも止まりません。
そこで「Mohsペースト」を使うことに
Mohsペーストとは人の皮膚がんに対して使われる塗り薬です。塗った部分の細胞を固めます。
- 固めた部分を切除することでしこりを小さくする
- 固めることで出血や分泌液を止める
ということで手術をできないワンちゃんにうってつけのものとなります。
2023年の3月時点ではこのような大きさでした。
出血をわずかに起こしては治まり出血しての繰り返しで非常に大人しいしこりでした。
9月になると数倍に大きくなり表面から分泌液や出血しっぱなしといった状態になりました。
その後止血剤や包帯を巻いて管理しようとしましたが耳の下という事で上手く管理できませんでした。
こちらがMohsペーストを使った後の写真になります。
しこりの表面が真っ白くなり分泌液や出血が止まりました。
1回目のペーストの3日後の状態です。
中央がクレーターのようにへこんでいることがわかります。
この後再度ペーストを2回塗布しました。
3回目から2日後。
表面がかさぶたのようになり固まっております。
この日はこのまま様子を見ました。
その後はオーナー様お手製のエリザベスカラーで傷を保護していただきました。
緩衝材(ネットショッピングしたときに段ボールに一緒に入っているプチプチですね)これを首に巻き付けていただいてました。
その後、3週間ほどご自宅でガーゼを交換していただきながら傷の管理をしました。
その後の写真がこちらです。
目を凝らして探さないとわからないくらいに小さくなりました。
実際の大きさは1mmほどです。
現在は液体窒素で冷却処置をしてさらなる縮小を図っております。
以上がMohsペーストを使ったワンちゃんの経過です。
Mohsペーストによる処置の流れは以下のようになります。
- しこり表面をきれいにする
- ペーストを塗り込む
- しこりの大きさにより20分から数時間放置
- 洗浄処置
- 洋服やカラーによるしこりの保護
となります。日中少しの時間お預かりいただければ処置終了となります。状況に応じて何度か同じ処置を実施します。
かなり気軽にできますね。皮膚のしこりからの出血にお悩みの方はぜひお問い合わせください。
アリス動物病院(習志野市谷津)